古代エジプトの女王クレオパトラが飲んだワイン。その中に含まれていた水分子が、現代の私たちの飲む水に含まれている可能性があるとしたら?アボガドロ数の大きさについて考えてみよう。
※計算に上の記事内容の知識が必要となります。
アボガドロ数はいかに大きい数字なのか
今日は、アボガドロ数がいかに大きい数字なのかを考えてみよう。
アボガドロ数は、6.0×1023ですね。化学では、これだけの粒子を集めて、1molと呼ぶのでしたね。
※計算では、6.0×1023とすることが多いです。
10の23乗なんて、想像もできない数字です。
10の12乗が「兆(ちょう)」、16乗が「京(けい)」、20乗が「垓(がい)」というから、1000垓で10の23乗だね。
アボガドロ数がいかに大きいかを考える、あるお話があるんだ。今日はそのお話をしよう。「クレオパトラのワイン」というお話だよ。
クレオパトラって、あの古代エジプトの女王ですか?歴史の授業で少し学びました。
そうだね。彼女の時代には、ワインがよく飲まれていたんだ。今日は歴史ではなくて、クレオパトラが飲んだ一口のワインからアボガドロ数の大きさを考えてみるよ。
クレオパトラが飲んだワインの水分子の数
早速だが、クレオパトラが一口飲んだワインが、現代の私たちが飲む水の中にどれくらい含まれているんだろうか。
え?古代のワインの水分子なんて、もうどこにもないんじゃないですか?
そう思うよね。でも水分子はかなり安定した物質だから、今回では「古代から現代まで水分子のまま存在している」と考えて実際に計算してみよう。そうすると、驚くべきことがわかるんだ。
まず、クレオパトラが一口飲んだワインを50mlと仮定しよう。このワインのほとんどは水だから、水50mlをそのまま計算に使うよ。水50mlの質量は50gだ。この中に水分子が何個あると思う?
水のモル質量は18g/molだから、50gの水に含まれる水分子は…
計算すると、だいたい1.67×1024個ですね!
バッチリだ。この1.67×1024個の水分子がクレオパトラが飲んだ一口のワインに入っていたということになる。
一口と言っても、分子の数にすると思ったより多いですね!
地球全体の水の量
次に、地球上の水全体の量を考えてみよう。地球上の水は、海水や氷河、地下水などを全部合わせると、約1.39×1021Lあると言われている。これを質量に換算すると1.39×1024gの水があることになるよ。
すごい量ですね。さすがは「水の惑星」地球ですね。
さらに、この全水量に含まれる水分子の個数を計算すると?
こちらは計算すると、だいたい4.63×1046個です。
つまり、地球上の水には約4.63×1046個の水分子が含まれているんだ。
クレオパトラのワインの分子数と比べても、全然スケールが違いますね!
水の完全混合を仮定する
ここで一つ仮定をしよう。クレオパトラのワインの水分子は、クレオパトラの死後も循環し、蒸発して雨になり、川や海を流れて、地球上で散らばっていく。先ほど「古代から現代まで水分子のまま存在している」としたね。この間に、地球上の水全体に完全に均一に混ざったと考えるんだ。
そんなに均一に混ざるものなんですか?
現実には難しいけど、化学の理論としてこう考えると話が進むんだ。これを仮定して、現代の私たちが飲むコップ一杯の水(250ml)に、クレオパトラのワインの水分子がどれくらい含まれているかを計算してみよう。
現代のコップ一杯の水(250mL)に含まれるワイン分子
まず、250ml(250g)の水に含まれる水分子の数を求めるよ。
ええと、計算すると8.33×1024個ですね。
次に、先ほど計算した条件を使って、クレオパトラのワインの水分子が地球上の水分子全体に占める割合を求めよう。
割合は3.60×10−23になりますね。これが、水分子1つを取ったとき、クレオパトラの水分子に当たる確率ということですね。
そうだね。コップ1杯の水の分子数には、8.36×1024個の水分子が含まれていたから、掛け算をするとその水の中に含まれるクレオパトラのワインの水分子の数がわかる。
大体300になりますね。つまり、この水のなかに…
そうだ。現代の私たちが飲む水1杯には、クレオパトラの飲んだワインの水分子が約300個含まれていると計算できるんだ。
嘘みたいですね!
まとめ
確かに嘘みたいな話だけど、計算の辻褄は合っている。この話は、アボガドロ数がいかに大きい数字であるかということを示しているよ。
漠然と「大きい数字だ」と思っていましたが、スケール感が少し掴めた気がします。壮大な話でしたね!