本日は、糖類について、特に、多糖について学習していきましょう。
この内容は、単糖、二糖(グリコシド結合)ついての知識が必要となりますので、前回までの内容をまだ学習していない場合は、先にそちらを学習しておくと良いでしょう。
多糖について
本日は、多糖について学んでいこう。
天然に存在している多糖にはどのようなものがあったかな?
穀物に含まれているデンプンは、まさに天然高分子化合物の多糖でした!
天然に存在する高分子化合物としての糖類は、多糖のことを指します。デンプンというのは総称で、主成分はアミロースとアミロペクチンとなります。
例えば、お米に含まれるデンプンとサツマイモに含まれるデンプンは少し性質が違いますし、同じお米でも、うるち米ともち米では性質が違いますね。アミロースとアミロペクチンの割合や重合度などによってデンプンの性質は異なるのです。したがって物質として学ぶ際は、アミロースとアミロペクチンに分けて性質を見て行きましょう。
ところで、多糖はどのようにしてできるんだったかな?
多糖は重合体で、その単量体は単糖ですから…
単糖が重合すれば多糖ができますよね?
そうだね。糖同士はグリコシド結合と呼ばれる縮合反応によって結合するから、重合パターンは縮合重合でいいよ。
逆に、多糖を加水分解していくと最終的には単糖まで加水分解されるよ。
単糖2分子を脱水縮合させると、まず二糖となります。そして、続けて繰り返し縮合(縮合重合)せていくと、多糖になります。糖類の分子間で脱水縮合が起きると、特にグリコシド結合と呼ばれる結合が形成されます。したがって、多糖は単糖がグリコシド結合によってたくさん繋がったものといえます。
覚えておきたい多糖は、たったの2つ。アミロースとセルロースだ。
あれ?アミロペクチンはいいんですか?
アミロペクチンもあとで触れるけど、アミロースが基本構造となっているから、まずはアミロースを見てみよう。
絶対に覚えたい多糖① アミロース
まずは、デンプンの主成分でもある、アミロースだよ。アミロースはα-グルコースが繋がってできる。
α-グルコース2分子が1,4-グリコシド結合によって結合すると、二糖のマルトースになりましたよね?
そうだね。さらに沢山のα-グルコースが、1,4-グリコシド結合によって繋がっていくと、アミロースの構造となるよ。
アミロースはα-グルコースの縮合重合によって生成します。
α-グルコース2分子が1,4-グリコシド結合によって分子繋がるとマルトースができましたが、さらに沢山のα-グルコースが1,4-グリコシド結合によって左右に繋がっていくと、アミロースの構造となります。
ただし、ただ単純にまっすぐ繋がった構造ではなくて、結合をする際には、実は少し角度がついて曲がった繋がり方をしているんだ。
すると、全体としてどんな構造になるかわかるかな?
らせんを巻いた構造になりました!
α-グルコースが1,4-グリコシド結合する際には、実は少し角度がついて曲がった繋がり方をしています。マルトースの構造を書く際はあまり意識しませんでしたが、繰り返し繋がっていく際には、この歪みにより少しずつ曲がりながら繋がっていきます。よってアミロースは、直鎖状のらせん構造をしています。これがアミロースの大きな特徴と言えるでしょう。
アミロースの検出には、ヨウ素デンプン反応が用いられるよ。
アミロースはでんぷんの主成分ですもんね。
実は、この呈色にはアミロースのらせん構造が関係しているんだ。
アミロースの検出は、ヨウ素デンプン反応によって行うことができます。青紫色に変化するというのは、ご存知の人も多いかと思いますが、この呈色が起こる理由は、アミロースの螺旋構造に、ヨウ素分子が取り込まれることで起こるのです。なお、約50℃に加熱するとアミロースのらせん構造が崩れ、内部に入っていたヨウ素が抜け出ることにより青紫の呈色はなくなります。
そんな理由だったんですね!
アミロペクチンとグリコーゲン(補足)
アミロペクチンとグリコーゲンは、アミロースの構造を基本とした多糖だよ。ついでに覚えておこう。
アミロペクチンは、アミロースの構造に加えて、多数の枝分かれ構造を持っています。
1,4-グリコシド結合だけでは直鎖のらせん状構造となりますが、所々に1,6-グリコシド結合が形成されることで、枝分かれができます。
アミロペクチンは、でんぷん粉に含まれますが、特に餅米に多く含まれていることで知られています。この複雑な立体網目構造が、餅の粘り気を生み出していると言えますね。ヨウ素デンプン反応は示しますが、色は青紫ではなくて赤紫色に呈色します。
グリコーゲンは、アミロペクチンに、さらに多くの枝分かれができた構造をもち、分子も大きく複雑になっています。分子量が大きいにも関わらず、冷水にとけ、ヨウ素デンプン反応は赤褐色に呈色します。グリコーゲンは、動物デンプンとも呼ばれ、動物の肝臓や筋肉に貯蔵されています。必要に応じて速やかにグルコースに分解され、エネルギー源として利用される、とても高性能なデンプンです。
絶対に覚えたい多糖② セルロース
あと覚えておきたい多糖は、セルロースだね。自然界で最多の有機化合物と言われており、植物の細胞壁などに存在しているよ。
構造は、β-グルコースが1,4-グリコシド結合を繰り返して繋がった構造をしている。
さっき(アミロース)はα-グルコースでしたが、次はβ-グルコースなんですね。β-グルコースは、1位炭素の向きがα型と違っていました。
セルロースを書く前に、二糖のセロビオースの構造は、書けるかな?
β-グルコース二分子が1,4-グリコシド結合によって結合すると、二糖のセロビオースとなりますね。確か片方をひっくり返して…
かけました!
いいね。あとは、この結合を左右に繰り返して伸ばしていくとセルロースになるよ。
さらにβ-グルコースを1,4-グリコシド結合によって繋げていくとセルロースの構造となります。α-グルコースの時と違って、一分子ごとにグルコースが表裏ひっくり返りながら繋がるため、歪みが解消されて、らせん構造にはなりません。
すなわち、セルロースは螺旋のない、直鎖の繊維状構造となるのです。
らせん構造ではないので、ヨウ素分子が取り込まれることもなく、ヨウ素デンプン反応は示しませんね!
セルロースは、セルロース工業として、様々な分野で利用されます。
たとえば、ヒドロキシ基を硝酸とエステル化し、トリニトロセルロースとすることで、火薬として利用することができます。また、化学処理することで、再生繊維であるレーヨンにしたり、アセテート繊維にしたりして利用することもあります。この辺りの内容については、また改めて、別で扱っていきましょう。
多糖から単糖まで分解するには
最後に、多糖の分解についての説明しておこう。
私たち生物は、デンプンなどの多糖を摂取したのち、体内で分解をし、生命活動に利用しているんですよね!
糖を分解する手助けをしてくれる物質を、加水分解酵素というよ。例えば、デンプンは唾液中に含まれる「アミラーゼ」という酵素の働きにより、マルトースまで分解される。
酵素とは、体内で起こる多種多様な化学反応を触媒する物質の総称です。
デンプンは、アミラーゼという酵素の働きで徐々に分解されていき、デキストリンを経て、最終的にマルトースまで分解されます。
お米を噛み続けると甘くなっていくのは、唾液中のアミラーゼがしっかり働いている証拠なのですね!
一方、セルロースは、セルラーゼという別の酵素によって、セロビオースに分解されます。
残念ながら人間はこの酵素を持っていないので、どんなにキャベツを噛み続けても、分解することはできないよ。
草食動物は、体内にセルロースを分解できる微生物を飼っていて、その微生物にセルロースを分解してもらうことでエネルギー源としているようです。※人間もほんの少し微生物に分解してもらっています。
じゃあ、人間にセルロースは意味がないんですか?
大いに意味はあるよ。確かにセルロースをエネルギー源にはできないけれど、食物繊維という形で、体の中で大事な働きをしているんだ。腸内環境も良くなるメリットもある。
ついでに、二糖から単糖まで分解する酵素を、一気にまとめて見ていきましょう。
マルトースはマルターゼ、セロビオースはセロビアーゼ、スクロースはスクラーゼ、ラクトースはラクターゼによって、それぞれ構成単糖まで分解されます。なお、水溶液中では、鎖状構造を介した、α型とβ型の混合物となります。
酵素の名前は、覚えやすくて良いですね!
ちなみに、スクロースを加水分解すると、グルコースとフルクトースが1対1で存在する等量混合物となるのですが、これは転化糖と呼ばれて、とても甘味が強いんです。
まとめ
今日は多糖について重要事項をまとめてみたけど、どうだったかな?
一度で覚えきるのは難しいです!
多糖は天然高分子化合物の代表的な物質なんだけど、知識としては元となる単糖や二糖の知識が必要だからね。その辺りも合わせて、何回も繰り返して覚えていこう。
うう、頑張ります!ところで、お腹が空いてきました。
よしよし、脳がしっかり働いた証拠だね!休憩にしよう。