化学

高分子化合物とはどんな物質?特徴をつかもう

はじめに

水分子や酸素分子など、これまでに扱ってきた物質は、分子量が小さく分子の構造も比較的簡単でした。これに対して、分子量がはるかに大きくなる物質、すなわち高分子化合物というのもこの世界にたくさん存在しています。ここではそれら高分子化合物の全体的な特徴について見ていきましょう。

分子の大きさ

ケミ太

高分子化合物って、どのくらい大きいんですか?

博士

だいたい、分子量が10000以上になる物質のことを指すよ。

高分子化合物とは、その名の通り大きな分子となり、その分子量は1万を超えます。
H2Oの分子量は18、二酸化炭素CO2は44ですが、これは低分子ですね。もう少し分子量の大きいブドウ糖C6H12O6でも180です。10000というのが、分子量としてかなり大きいことがわかりますね。

高分子化合物の分類

博士

では、どんなものが高分子として存在しているんだろう。分類するとこのような感じになるよ。具体的な高分子を思いつくかな?

高分子化合物は、有機化合物である有機高分子と、無機化合物である無機高分子に分かれ、それぞれ天然に存在する天然高分子と、人工的に合成される合成高分子に分類されます。

ケミ太

身の回りの高分子を探して分類してみます!

有機高分子で天然に存在するものは、穀物に含まれる澱粉や、動植物に広く分布するタンパク質といったものがあります。それに対して人工的に合成される有機高分子には、プラスチック類でお馴染みのポリエチレンやペットボトルに使われるポリエチレンテレフタレート(PET)など、様々なものがあります。

それに対して、無機高分子には、天然に存在するものだと石英や長石、雲母といった鉱物の結晶は、巨大分子として高分子に分類されます。また、無機物の合成高分子には、ガラスやセラミックスといったものがあります。

なお、無機高分子化合物より有機高分子化合物のほうが圧倒的に種類が多く、一般に、高分子化合物といえば有機高分子化合物をさすことが多いです。

博士

大体どんなものが該当するか分かったようだね。

ここからは、特に有機物の高分子化合物について詳しくみていこう。

代表的な3つの重合反応

博士

高分子化合物は、初めから大きかったわけではないよ。元になる小さな分子があって、それが連鎖的に繋がって大きくなっていったんだ。

元になる小さな分子を単量体(モノマー)といい、連鎖的に繋がる反応を重合反応というよ。そうやってできた高分子化合物は、重合体(ポリマー)と呼ばれるんだ。

ケミ太

ポリマーという単語はどこかで聞いたことがある気がします。

高分子は大きな分子ですが、初めから大きいわけではありません。
高分子化合物は、小さな分子をスタートにして、重合反応によって大きくなった分子なのです。このとき、高分子を作る元になった低分子を、単量体、もしくはモノマーといいます。
この単量体が重合反応をすることで大きくなったものは重合体、もしくはポリマーと呼ばれます。この重合体というのが、分子量一万を超えたあたりから、一般的に、高分子化合物と呼ばれるようになるのです。

博士

重合反応には、大きく3つのパターンが存在するよ。1つずつ順番にみていこう。

① 付加重合

博士

まず1つ目は、付加重合だ。その前に、付加反応は知っているかな?

ケミ太

はい。たしか、二重結合や三重結合のうち1本が切れて、そこの部分に別のものが結合する反応が付加反応でしたよね?

博士

まぁ大体はそれでいいだろう。付加反応が連鎖的に起こるのが付加重合だ。

エチレンC2H2という物質を例に見ていこうか。

付加重合とは、二重結合のような不飽和結合を持つ単量体が、付加反応を連鎖的に繰り返すことで起きるものです。エチレンには炭素間に二重結合がありますが、この二重結合のうち1本は切れやすい性質があります。切れてしまった場合、炭素の結合の手が余る状態になり、この部分に別のものが結合する反応が付加反応と呼ばれます。

エチレン分子同士で連鎖的に付加反応が起こると、どんどん長い分子となっていきます。これが付加重合であり、この際にできる重合体はポリエチレンと呼ばれています。「ポリ」というのは「たくさんの」という意味があります。単量体のエチレンがたくさんたくさん繋がったからポリエチレンなのですね。

ケミ太

構造式を書こうと思ったら日が暮れてしまいますね。

博士

繰り返し構造を[ ]でくくって、右下に小さくnと書けばいいよ。このnは重合度といって、繰り返されている回数を表すものなんだけど、何回繰り返されているかわからない場合はnでいいんだ。

構造を書く際は繰り返し単位を[ ]でくくって、右下にn(numberの頭文字)を書くことで表現します。ここに書く数字は重合度といい、繰り返しの回数を表しています。また、構造が複雑になりがちなので、水素原子はできるだけ炭素Cの後に省略して書いておくとスッキリしておすすめです。

ケミ太

n=3とかだと、高分子になりませんね。

博士

さすがに、nが3だと低分子だね。

問.分子量が10000となるポリエチレンの重合度はいくらか。なお,原子量はH=1,C=12とする。

ポリエチレンの繰り返し単位の分子量は28となりますので、分子量が10000となるポリエチレンの重合度は、計算すると大体357くらいとなりますね。10000を超えるための重合度と聞かれたら358ということです。なお、端に存在する水素原子Hについては、誤差の範囲なので計算上省略して構いません。

ケミ太

つまり、必要となる単量体エチレンは358分子、ということですね。

② 縮合重合

博士

重合反応の種類に話を戻そう。二つ目の重合反応は、縮合重合だよ。

ケミ太

縮合とは・・・なんでしたっけ?

博士

縮合というのは、分子と分子の間で、水分子などの小さい分子が取れて繋がることを指すよ。

縮合重合とは、縮合が連鎖的に繰り返していく反応のことだね。

具体的な例として、テレフタル酸とエチレングリコールの縮合重合をみてみようか。

それぞれの構造を横に並べてみると、隣り合ったOHとHの部分で水分子が作れそうです。
この部分を水分子として取り去り、余った結合の手同士で二つの分子を交互に繋げていくと、細長い繊維状の高分子である、ポリエチレンテレフタレートの構造ができることがわかります。水分子が取れて縮合(脱水縮合)が繰り返されるので、まさに縮合重合ですね。

博士

ちなみにポリエチレンテレフタレートは、頭文字をとってペット(PET)と呼ばれるよ。ペットボトルに使用されるほか、ポリエステル繊維として、フリースの素材などに利用されているんだ。

③ 開環重合

博士

三つ目の重合反応は、開環重合だよ。環というのは、環状化合物の環のことだよ。

ケミ太

開環…環状化合物が環を開きながら重合するんですね?

博士

ピンと来ないよね。具体的な物質で見ていこう。


開環重合は、名前の通り、輪っかを持つ化合物が、その輪を開きながら重合していくことを指します。代表的な例として、ε−カプロラクタムの開環重合をみてみましょう。

ε−カプロラクタムにはC、O、N、Hと繋がるアミド結合があります。
水を加えて260℃程度に加熱し、減圧下で水分を除去しながら反応させると、このアミド結合の部分が切れ、開環します。

開環した分子は直鎖状になり、分子の端どうしでアミド結合が形成され直します。この反応が繰り返し起こり、重合していくのです。これが開環重合です。ナイロン6という高分子化合物ができました。


以上、付加重合、縮合重合、開環重合の三つが、主な重合反応となります。

博士

ナイロンは化学構造が絹によく似ており、絹のような光沢と肌触りがある合成繊維として利用されるよ。

ケミ太

僕のリュック、タグにナイロンって書いてあります!

高分子化合物の特徴

博士

最後に高分子化合物の特徴として、多くの高分子化合物にみられる性質を4つ紹介するよ。

① 分子量が一定の値を示さない

まずは、高分子化合物は分子量が一定の値ではない、ということです。
例えば、冒頭でもありましたが、水は分子量が18、二酸化炭素は44でしたね。このように、低分子は一定の分子量を示すことが多いですが、高分子であるポリエチレンの分子量は一つに決まっていません。

ケミ太

ポリエチレンの中でも、長いものから短めであるものまで存在しているんですね。

博士

そうだね。さらに、その長いものから短いものまでが、混在した状態で存在しているんだ。

そのため、分子量を測定する実験などを行って高分子の分子量の値が求まったように見えても、その値は平均分子量を表しており、全ての分子が一定の値となっているわけではないのです。次のグラフは、合成高分子化合物について、縦軸に分子数、横軸に分子量をとったものです。

グラフは山なりになっており、分子量にばらつきがあることがわかります。平均分子量付近が、分子の数が多くなっている形になっていますね。これは正規分布と呼ばれる形です。
また、天然高分子と合成高分子を比較したグラフを見てみると、天然高分子の方が分子量のばらつきが少ない(平均付近の分子数が多い)ということもわかります。

博士

生物によって作られる天然高分子は、生体内で特定のプロセスを経て作られるので、あまり不揃いにはならず、分子量が一定の幅に収まるようになっているんだね。

② 融点が一定の値を示さない

博士

2つ目は①に関連した性質なんだけど、高分子化合物は一定の融点を示さないよ。

2つ目の特徴は高分子化合物は一定の融点を示さないということです。これは①の分子量が一定でないことに関連して起こる現象と言えるでしょう。常圧で氷を加熱していくと、0度で融点に達して、全て溶け切ると再び温度が上昇していきます。このように、一種類の分子からなる純物質は、融点の値が決まった値となるのです。しかし、分子量が不揃いな高分子化合物を加熱していくと、軟化点と呼ばれる温度で柔らかくなり、いつの間にか液体になっていくという現象が起こります。中には、加熱途中に軟化せず、途中で分解してしまう高分子もあります。

③ 水に溶けにくい

博士

3つ目、高分子化合物は水に溶けにくいものが多いよ。

3つ目の特徴は、高分子化合物は粒子が大きいため、水に溶けにくいものが多いということです。デンプンのように、少し水に溶けるものもありますが、溶解しているというよりは水中に分散(漂っている)している状態となります。これは、コロイド溶液と呼ばれています。希薄な高分子の溶液は、ゾルと呼ばれる粘性のある流動性のコロイド溶液となっています。さらに濃くなっていくと、流動性を失いゲルとなります。豆腐や寒天、ゼリーなどがその例ですね。

ケミ太

分子のサイズが大きいので、水に溶かすのも一苦労ですね!

④ 結晶化しにくい

博士

4つ目の特徴は、高分子化合物は結晶化しにくいということだよ。

高分子化合物の固体では、分子全体が規則正しく配列することはほとんどなく、結晶領域と非結晶領域が入り混じった構造になるんだ。

このように、高分子化合物は、結晶領域と非結晶領域が入り混じったモザイク構造をとることが多くなります。高分子化合物は長くて不揃いであるため、なかなか綺麗に配列するのは困難であるためですね。高分子の性質はこの領域の割合によって大きく左右されます。

博士

結晶領域はまったく存在しない場合もあるよ。

まとめ

ケミ太

高分子について、これでバッチリです!

博士

いやいや、これは高分子化合物の全体の概要だよ。

具体的な性質や特徴は、それぞれの高分子1つ1つをしっかり学んでいく必要がある。

ケミ太

全体像をとらえながら、個々の高分子について細かく覚えていけばいいんですね!

博士

そうだね。

天然高分子なら、「糖類」と「タンパク質」

合成高分子なら、「繊維」と「樹脂」と「ゴム」

について学んでいくといいだろう。どれも身近な物質だから、興味のあるところからやっていけばいいさ。

まとめ

✔︎ 分子量10,000を越える物質を、高分子化合物と呼ぶ。

✔︎ 高分子化合物(ポリマー)は、単量体(モノマー)が重合してできる。

✔︎ 高分子化合物は一定の分子量を示さない。化学的性質も一定ではない。

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