本日は、糖類について、特に、二糖について学習していきましょう。
この内容は、単糖についての知識が必要となりますので、前回の内容をまだ学習していない場合は、先にそちらを学習してください。
目次
二糖について
本日は、単糖をつなげていくことを考えよう。
単糖は、確か糖の最小単位でしたね。繋げていくと、次は二糖ですか?
まず、糖の種類についての復習です。天然に存在する高分子化合物としての糖類は、多糖のことを指します。デンプンの主成分である、アミロースやアミロペクチンが代表例ですね。
多糖は加水分解していくと、糖の最小単位である単糖まで分解されます。グルコースやフルクトース、ガラクトースがその代表例でしたね。
これらの単糖を縮合重合させ、繋げていくと多糖になるんだけど、その前にまずは単糖を2分子繋げて、二糖にすることを考えてみよう。
どうやって繋げるんでしょうか。
脱水縮合させて繋げるんだ。脱水とは水が取れること、縮合とは小さな分子が取れて繋がることを指すよ。
水分子が取れて二つの分子が繋がれば、脱水縮合ですね!
糖類の分子間で脱水縮合が起きると、特にグリコシド結合と呼ばれる結合が形成されるよ。実際に、α−グルコース2分子をグリコシド結合で繋げてみよう。
α−グルコース2分子を隣同士に並べると、1位の炭素についているヒドロキシ基と、4位の炭素についているヒドロキシ基が隣同士にきます。
この部分でH2Oを作って脱水させてみます。
余った結合の手どうしを繋げると、単糖2分子が繋がり二糖となりました。この時のグリコシド結合は1位と4位の炭素間にできましたので、1,4-グリコシド結合となります。α−グルコース2分子が1,4-グリコシド結合によって繋がったこの構造は、マルトース(麦芽糖)と言います。なお、二糖の分子式ですが、単糖がヘキソース類同士である場合C6H12O6を2倍したのち、水分子H2Oをひとつ分を除けば良いので、C12H22O11となりますね。
二糖の構造を書くのは大変ですけど、単糖の構造と繋げ方を覚えておけば、その場で作ることができそうですね!
覚えておきたい代表的な二糖を4つ紹介するよ。まずは今作ったマルトースからだ。
覚えておきたい二糖① マルトース(麦芽糖)
マルトースは麦芽糖と呼ばれるだけあって、麦の芽に含まれている二糖だよ。他にも水飴も主成分はマルトースだね。
α−グルコース2分子が1,4-グリコシド結合によって繋がった二糖を、マルトース(麦芽糖)と言います。有名な二糖ですので、構造を書けるようにしておきたいですが、丸暗記するよりは、グルコースをつなげて作ることができるようにしておくと良いでしょう。
グルコースの構造にあるヘミアセタール構造(OーCーOHの並び)は、一つ(左側)は結合に使われて消えましたが、もうひとつ(右側)は残っています。マルトースの水溶液は、この部分が開裂することで水溶液中ではアルデヒド基が出現し、還元性を持ちます。(還元性について詳しくは、前回の講義「単糖について」を見て下さい)
覚えておきたい二糖② セロビオース
次はβ−グルコース2分子を1,4-グリコシド結合させて、セロビオースと呼ばれる二糖を作ってみよう。できるかな?
まずはβ−グルコースを2分子並べてみます!あれ?
先ほどと同様に、グルコースを横に並べてみますと、1位と4位の炭素に結合しているヒドロキシ基OHが、反対側(対角に位置)になってしまっていますね。
そういう場合は、少しズラして書くといいよ。
構造どうしを単純にずらして書くことで、ヒドロキシ基が隣同士になるようにします。
あとは、先ほどと同様に、脱水縮合すれば構造を書くことができます。
この書き方で問題ないけど、実はズラさずに書く書き方もあるから紹介しておくよ。それは、片方の構造を表裏でひっくり返して繋げるというものだ。
右側のβ−グルコースの構造を反転させてみましょう。……の部分を団子の串に見立てて、くるっと180°ねじって回す感じです。
左のβ−グルコースの1位と右のβ−グルコースの4位のヒドロキシ基OHが無事に隣同士になりましたね!
あとは、先ほどの要領で脱水縮合させればいいね。セロビオースの完成だ。
先ほどよりも難しい書き方ですが、こちらの書き方で書かれることも非常に多いので、ぜひ書けるようにしておきましょう。
なお、グルコースの構造にあるヘミアセタール構造は、一つは結合に使われて消えましたが、まだひとつ(図の右側)残っています。よって、セロビオースの水溶液もマルトースと同様に還元性を持ちます。
セロビオースは自然界では松の葉に少量含まれる程度で、あまり存在していない。甘味はほとんどないよ。
覚えておきたい二糖③ スクロース(ショ糖)
次は、砂糖の主成分にもなっているスクロース(ショ糖)をみてみよう。一番有名と言ってもいい糖だと思う。
日常生活で一般的に糖といえば、お砂糖ですもんね。
しかし、この糖の構造はなかなか書きづらいよ。結合でいうと、α−グルコースとβ−フルクトースのフラノース型が、1,2−グリコシド結合で結合した構造となっています。まずこの2つの単糖を隣同士に書いてみようか。
結合させたい場所が、遠く離れてしまっています。このままでは結合できません!
スクロースの2つの構成単糖を横並びに書くと、α-グルコースの1位の炭素と、β-フルクトースの2位の炭素は、ともに単糖の右側になっています。これではズラして書くということができません。どちらかの単糖をひっくり返す必要があります。
右側のフルクトースを、ひっくり返してみましょう。今度は左右で表裏を反転させます。反転させるので、上側に付いているものは下側に来ることに注意してください。
結合させたいヒドロキシ基OHどうしが、うまく隣同士になりましたので、このまま脱水縮合させて繋げます。
これが、スクロースの構造です。構成単糖にあったヘミアセタール構造が、ともに結合に使われて消えてしまうため、スクロースの水溶液は、水中で開裂することができず、還元性がありません。
スクロースに還元性が無いことは、他の二糖との違いとして重要な点となるよ。
覚えておきたい二糖④ ラクトース(乳糖)
最後に紹介する二糖は、乳糖とも呼ばれる、ラクトースだよ。
構成単糖は、β-ガラクトースとα-グルコースで、結合は1,4-グリコシド結合だ。ここまできたら、自分で構造を書けるかな?
まずはβ-ガラクトースとα-グルコースを書いてっと。
β-ガラクトースの1位を結合させたいので、左側に書いておきましょう。α-グルコースを右に書き、4位の炭素に付いているヒドロキシ基と結合させます。
このパターンは、ズラせば書けそうですね!
ヒドロキシ基OHが対角にありますので、ズラして隣に来るように書きなおします。あとは、脱水縮合させれば、ラクトースの完成です。
よしよし。それでいいよ。
ついでに、ひっくり返して書くやり方もやってみよう。
回転させて書く書き方も押さえておきましょう。右側のα-グルコースの表裏を、前後でひっくり返します。
そして、隣り合ったヒドロキシ基で脱水縮合させれば書くことができますね。
できました!
大丈夫そうだね!ラクトースは、牛乳などに含まれる二糖だ。
ちなみに、ラクトースの水溶液は、還元性があるかな?
ヘミアセタール構造が残っているかを探せばいいですね。
ヘミアセタール構造が一箇所残っているので、ラクトースの水溶液は還元性がありますね。
まとめ
覚えておくべき二糖について、わかったかな?
はい、二糖を書くには、元になる単糖がきちんとかける必要がありますね。
そうだね、あとは、繋げ方を覚えておけば、その場で考えて書くことができる。何回も繰り返し書いているうちに、書けるようになるはずだよ。
最後に少し考える問題を出しておこう。今日の内容がわかれば、きっとできるよ。ぜひやってみてね。答えはまとめ黒板の下だよ。
問. 二糖のひとつであるトレハロースは、α-グルコース2分子が1,1-グリコシド結合によって繋がった構造をしている。以下の問いに答えよ。
⑴ 構造式を書け。
⑵ トレハロースの水溶液に還元性はあるか。
✔︎ 単糖2分子が脱水縮合によって結合すると、二糖となる。
✔︎ 単糖どうしの結合は、グリコシド結合と呼ばれる。
✔︎ 覚えておくべき二糖は、マルトース、セロビオース、スクロース、ラクトースの4種類である。