本日は、糖類について学んでいきましょう。
糖類と聞くと、砂糖のようなものを想像する人もいるかと思いますが、砂糖の主要成分であるスクロース以外にも、たくさんの種類の糖類があります。糖類は大きいものだとデンプンのように高分子化合物となりますが、今回はその元となる単糖について見ていきましょう。
目次
糖類とは
僕、糖類は甘いので大好きです。
確かに、このドーナツは甘くて美味しいけれど、糖類はお砂糖の主成分であるスクロース(ショ糖)の他にも、たくさんあるよ。そして、甘いものばかりではないよ。
えっ!そうなんですか。糖類は全て甘いものだと思っていました。では、糖類とはどのようなものを指すんですか?
糖類とは、一般にCn(H2O)mで書かれる構造をしていて、分子内に多数のヒドロキシ基ーOHを持っている物質を指すよ。
例えば、代表的な糖類であるグルコース(ブドウ糖)の構造はこのようになっている。
グルコースの分子式は、C6H12O6ですが、C6(H2O)6と書くこともできますね。
このように、炭素に水がくっついているような書き方ができるため、糖類は炭水化物と呼ばれることもあります。主食となるお米やパンは炭水化物に分類されますが、これらの主成分は、デンプンという糖類なのです。
糖類は、高分子化合物ですか?
デンプンの成分であるアミロースやアミロペクチンなどは、多糖といって高分子化合物だけど、グルコースC6H12O6の分子量は180だし高分子ではないね。デンプンのような高分子化合物の糖を分解(加水分解)していくとどんどん小さくなっていき、最終的には単糖と呼ばれる糖の最小単位となるよ。グルコースは、まさに単糖のひとつだ。
単糖とは、これ以上加水分解されない、糖類における単量体となります。単糖が二つ繋がると二糖、沢山繋がると重合体である多糖となります。まずは、単糖について詳しくいていきましょう。
単糖についての基礎知識
単糖から順に見ていこう。天然には何種類かの単糖が存在していて、炭素原子がいくつ含まれるかによって分類されているよ。
その中でも、炭素原子6個からなる単糖は、六単糖、もしくはヘキソース類と呼び、天然で一番多く存在するんだ。
炭素原子6個からなるヘキソース類が天然で一番多く存在し、次に多いのが炭素原子5個からなる単糖であるぺントース類となります。テトロース類以下の単糖は数があまり多くありませんので、ここではヘキソース類についてしっかり見ておきましょう。
先ほどのグルコースC6H12O6は、まさにヘキソース類ですね!
ヘキソースには、原子6個で環を作っている六員環構造(ピラノース型)と、原子5個で環を作る五員環構造(フラノース型)があるよ。
グルコースを例に見てみよう。
例えば、代表的なヘキソースであるグルコースは通常ピラノース型で存在していますが、フラノース型もないわけではありません。ただ不安定であるため、存在割合が極めて低くなっています。したがって、通常グルコースはピラノース型で書かれます。
よく見ると、炭素Cだけで環を作っているんじゃないんですね。
そうだね。酸素原子Oを含む環状構造となっているね。
さて、覚えておきたい代表的なヘキソースは3つあって、グルコースの他に、フルクトース、ガラクトースがあるよ。グルコースから順番に見ていきましょう。
重要な単糖① グルコース
先ほどから話題にあがっている、グルコースですね。
グルコースは、動植物の基本的なエネルギー源となっており、ブドウ糖とも呼ばれているよ。筋肉や脳を働かせるために必要不可欠な物質であるので、いわば生物にとっての燃料とも言える。ぜひ書けるようにしておこう。
グルコースの結晶中には、基本的にα型のピラノース型が存在していますが、水溶液中では、鎖状構造を介してβ型も多く存在するようになります。
α型とかβ型とか、なんのことですか?
単糖類は、それぞれα型とβ型が存在するんだ。単糖類は水に溶けると、環状構造から鎖状構造(環がない構造)を経てα型とβ型が入れ替わることができる。だから、この2つの形はどちらもグルコースとし、αとβで区別している。
グルコースは、水溶液中では環状構造の一部が開裂し、鎖状構造となることがあります。
この時、グルコースの右上に位置している、OーCーOHの並び、通称ヘミアセタール構造が開裂して鎖状構造となります。鎖状構造にはアルデヒド基が存在するため、グルコースの水溶液は還元性を示します。グルコースの6つの炭素原子には番号がついており、右端の炭素を1位の炭素と呼び、時計回りに6位の炭素まで順番となっています。
細かい定義は置いておいて、グルコースの場合は6位の炭素を含むーCH2OHと1位の炭素についているーOHが同じ位置関係にあるものをβ型、反対の位置関係となっているものをα型としている。
両方覚えなくても、α型が書ければβ型もすぐ書けそうですね!
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(パク)…思ったより控えめな甘さなんですね。ラムネみたいです。
重要な単糖② フルクトース
次は、フルクトースだよ。果物や蜂蜜などに存在する単糖で、自然界で一番甘味が強いと言われている。
フルクトースの結晶中では、主にβ型のピラノース型が存在しますが、水溶液中では、鎖状構造を介して、α型も含めた、ピラノース型と、フラノース型の複雑な平衡状態にあります。この中ひとつだけ覚えるとしたら、存在割合の大きいβ型で、なおかつこの後にも登場するフラノース型のフルクトース(右上の構造)をかけるようにしておくと良いでしょう。
うう…!頑張ります!
β型の方が甘味が強く、特に低温では、β型の割合が増加するため甘味が増すんだ。みかんなどの果物を冷やして食べると甘く感じるのは、このためであると言われているよ。
水溶液中で鎖状構造となる際には、グルコースと同様に、ヘミアセタール構造が開裂しています。しかし、この際生じるのはアルデヒド基ではなく、ヒドロキシケトン基が出現します。このヒドロキシケトン基も還元性を持つ形であるため、フルクトースの水溶液も還元性を示します。
重要な単糖③ ガラクトース
最後に、ガラクトースについてだよ。
牛乳など、哺乳類の乳汁に含まれる成分だよ。
ガラクトースの構造は、グルコースによく似ていますが、グルコースの4位の炭素に結合しているヒドロキシ基の向きが反対になっています。このように覚えておき、α型のガラクトース(フラノース型)を書くことができれば良いでしょう。
なお、ガラクトースもヘミアセタール構造を持っていますので、水中では鎖状構造をとることができます。その際にアルデヒド基が出現しますので、ガラクトースの水溶液も還元性を持ちます。なお、グルコースやフルクトースに比べると甘味はあまりありません。
あれ、ガラクトースの紹介はあっさりですね!
まぁ重要度でいうと、グルコースやフルクトースに比べるとね。でも、乳幼児の脳の発達に必要と言われている大切な単糖なんだよ。
単糖についての特記事項
あとは、単糖についての特記事項を押さえておこう。2点あるよ。
① 単糖の検出方法(還元性を利用)
グルコース、フルクトース、ガラクトースは還元糖と呼ばれ、水溶液は全て還元性を持ちます。よってこれらの単糖の水溶液は、以下に示す銀鏡反応やフェーリング液の還元反応によって検出できます。
アンモニア性硝酸銀水溶液に還元性のある物質を加えて温めると銀が容器の表面に鏡状に析出する反応。還元性有機化合物の検出に用いられる。
還元性を示す物質に、硫酸銅(II)水溶液と酒石酸カリウムナトリウム水溶液からなる試薬(通称フェーリング液)を加えて煮沸すると、酸化銅(I)の赤色沈殿を生じる反応。還元性有機化合物の検出に用いられる。
ちなみに、グルコースとガラクトースは、水中でアルデヒド基をもつので、アルドースと呼ばれます。対して、フルクトースはヒドロキシケトン基をもち、ケトースと呼ばれています。これらは全て、単糖がヘミアセタール構造を持っていることに由来しましたね。
② アルコール発酵
単糖の中でも、グルコースなどのヘキソース類は、酵母菌などが持つ酵素群であるチマーゼの働きによってエタノールと二酸化炭素に変化させることができます。
この反応がアルコール発酵であり、お酒の製造やバイオ燃料の製造に利用されています。
エタノールは、お酒のアルコール成分ですね!
まとめ
どうだったかな?糖といっても色々あるだろう。
そうですね。今日は単糖を見て行きましたが、まだまだ二糖や多糖もあるんですよね。
単糖は、糖類の中でも基本の糖なんだ。単糖が2つ繋がると二糖、たくさん繋がると多糖となるんだけど…まぁこれは次回にしようか。
勉強したら、また甘いものが食べたくなりました!
✔︎ これ以上分解できない糖類の基本構造を単糖という。
✔︎ 単糖は、グルコース、フルクトース、ガラクトースを押さえておく。
✔︎ 単糖は2つで二糖、たくさん繋がると高分子である多糖となる。