年代測定
博士、このニュース見てください。
1万年前の生物の化石が発見されたそうですよ。
でも、どうして1万年前と分かったんだろう。
年代を推測する方法はいくつか考えられるけど、そのひとつとして、炭素の放射性同位体の半減期を調べる方法があるよ。
放射性同位体?半減期?
同位体
まずは「同位体」から説明しよう。
原子を構成する3つの粒子は覚えている?
陽子、中性子、電子ですね。
そうだね。
陽子と電子の数は原子番号と一致し、元素によって決まっているんだけど、中性子の数は変化することがあるんだ。例えば水素で見てみよう。
自然界の水素は99.99%は中性子が無い水素なんだけど、中性子をひとつ持つ水素がごくわずかに存在していてね。重水素(デューテリウム)というよ。
質量数(陽子数+中性子数)が1から2になりましたが、普通の水素と性質が変わるんですか?
それが、質量数が違うだけで、化学的性質はほとんど同じなんだ。このように、原子番号が同じで、質量数の異なる原子を互いに同位体(アイソトープ) というよ。
なるほど。
同位体についてはわかりました。
放射性同位体
先ほどの話では放射性同位体と言っていましたよね。
放射性同位体(ラジオアイソトープ)はその名の通り、放射線を出す性質をもつ同位体のことだよ。
重水素の中性子がもうひとつ増えて2つになると、三重水素(トリチウム)と呼ばれる同位体になるんだけど、このトリチウムは水素の放射性同位体なんだ。
むむむ、少し難しくなってきました。
とりあえず、同位体には放射線を出す放射性同位体があるってことですね。
とりあえずそれでいいよ。
放射性同位体は不安定で、放射線を出しながら別の元素に変わっていく性質があるんだ。これを放射性崩壊という。例えばトリチウムは放射性崩壊をするとヘリウムに変わるよ。このとき,放射線(例えばβ線など)を出すから放射性同位体と呼ばれるんだ。
崩壊すると原子の構造が変化して、違う元素に変わるんですね!
半減期
年代測定に利用される質量数が14の炭素の放射性同位体(14C)は、放射性崩壊をすると質量数14の窒素(14N)に変わるよ。
次々と別の元素に変わって減っていき、放射性物質が半減するまでにかかる時間を半減期というんだ。14Cの半減期は約5730年で、さらに半減するためには5730×2の11460年かかる。
ひえー!そんなにかかるんですね!
半減の半減ってことは、最初の4分の1になっていればおよそ11460年前の化石ってことですね。
生物は生きている間は呼吸をしたり食事をする中で、身体のなかの14Cは常に入れ替わり、その割合は一定と考えられる。しかし死んでしまうと減っていくのみになるので、どのくらい減っているかを測定すれば、おおよその年代が測定できるってわけだね。
放射線って、なんか怖いイメージありましたが、こんなふうに利用できるんですね。