物質は,様々な種類の原子どうしが結合してできる。物質を構成する原子の種類や割合を元素記号を用いて表した化学式には複数の書き方が存在する。主なものに分子式,組成式,示性式,イオン式,電子式,構造式あり,目的に応じて使い分ける必要がある。ここでは分子式,組成式,示性式,イオン式の特徴を見ていこう。
化学式
酢酸の化学式はCH3COOHと出てきますが,C2H4O2とは違うのですか?
左が示性式,右が分子式の書き方だね。結論から言うと,酢酸の場合は左の示性式で書いた方が良いね。化学式の書き方は複数存在し,目的に応じて使い分ける必要がある。
試しに酢酸を様々な書き方で表すと,次のようになるよ。(※一部,無理矢理書いてるものがあります)
さまざまな書き方で酢酸の化学式を書いてみた。それぞれの書き方に特徴があり,それぞれメリットとデメリットが存在するため,目的に応じて使い分ける必要がある。それぞれの特徴を見ていこう。
電子式と構造式は別の記事で紹介しているよ。
分子式
分子式とは,分子を構成する元素の種類と原子数を示した化学式のこと。元素は基本的にはアルファベット順に記すよ。
分子で存在する物質は,構成する原子の種類を元素記号で表し,その数を元素記号の右下に書き添えた分子式で表す。例えば,酢酸分子は炭素原子2個と水素原子4個と酸素原子2個から構成されているので,C2H4O2となる。このとき,元素を書く順序はアルファベット順(C→H→O)となっている。ただ,アンモニアは(アルファベット順だとH→Nだが)NH3と書く。このように,元素を書く順番は,一部の分子では慣例的に決まっているものもある。また,小さく記載する数字は,1の場合は省略される。つまりアンモニアをN1H3とは書かない点に注意。
どの元素がどれだけあるかは一目瞭然ですが,どのように繋がっているかは分子式からはよくわからないですね
組成式
組成式は,原子の種類と割合を最も簡単な整数比で示したものだよ。
えっ!CH2Oでも酢酸なんですか?
酢酸を組成式で表そうとすると,こうなっちゃうね。こうなると酢酸かどうか分からなくなる。実際,ホルムアルデヒドという物質もCH2Oであり,組成式だと区別がつかなくなるね。つまり,酢酸を組成式で書くのは良くないということがわかる。
※ホルムアルデヒドは分子式もCH2Oとなるので,さほど違和感はないが,酢酸は組成式にしてしまうと,元の形がわからなくなる。一般に,分子で存在する物質を組成式で書くことはしない。分子は分子式か,後に記す示性式で書くのが良い。なお,正体不明の有機化合物を元素分析という実験で特定しようとすると,分子で存在する物質が組成式(この場合,実験式とも呼ぶ)という形で求まるが,それは実験の都合上そうなるだけであり,わざわざ分かっている分子を組成式で書きあらためるメリットは特にない。
じゃあ,いつ使うんですか?
組成式を使って表すのは,分子で存在しない物質だよ。具体的には,イオン結合でできている物質や金属単体かな。
イオン結合と組成式の書き方もあわせて復習しておこう!
示性式
示性式とは,物質の性質や特徴を表す原子団を分けて書く書き方だよ。特に有機化合物では,この原子団は官能基と呼ばれるんだ。
原子団?官能基?
少し難しい話になってしまっているけど,特徴的な形(官能基)を分けて書くことで,性質をある程度推測できるのが示性式なんだ。「性質示す式」ということだね。この書き方で書くと,知らない物質でも,ある程度性質が予想できるね。
イオン式
イオンで存在する粒子はイオン式で表そう。酢酸はイオンではないが,水に溶けると酢酸イオンと水素イオンが生じる。
イオンで存在する場合は,必然的にイオン式になるわけですね。
どのように使い分ける?
いつ,どの式を使えば良いのですか?
分子で存在する物質は分子式で,イオン結合でできている物質や金属は組成式で,有機化合物は示性式で,イオンはイオン式で表せば良いよ。
✔︎ 化学式には様々な書き方が存在する。
✔︎ 主な書き方は分子式・組成式・示性式・イオン式・電子式・構造式。
✔︎ 目的に応じて使い分ける必要がある。